【読書メモ】日本語の作文技術
はじめに
本書では読む側にとってわかりやすい文章を書くための「技術」を紹介する.
修飾する言葉とされる言葉を離しすぎない
×私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと証言したのかと思った.
○鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が証言したのかと私は思った.
否定の言葉を修飾するときは特に注意
×シンガポール海峡は,東京湾,瀬戸内のように対向船が違うルートを運行するよう航路が分離されていない.
修飾の順序の4つの原則
1.節を先にし,句をあとにする
×速くライトを消して止まらずに走る
○ライトを消して止まらずに速く走る
2.長い修飾語は前に,短い修飾語は後に
×明日は雨だとこの地方の自然に長くなじんできた私は直感した.
○この地方の自然に長くなじんできた私は明日は雨だと直感した.
3.大状況から,重大なものから
×小さな点となって日本列島の上空に花子の放った風船が消えていった.
○花子の放った風船が日本列島の上空に小さな点となって消えていった.
4.親和度(なじみ)の強弱による配置転換
×初夏のみどりがもえる夕日に照り映えた.
○もえる夕日に初夏のみどりが照り映えた.
テン(読点)のうちかた
- 渡辺刑事は,血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた.
- 渡辺刑事は血まみれになって,逃げ出した賊を追いかけた.
長い修飾語が二つ以上あるとき,その境界にテンをうつ
×病名が心筋硬そくだと元気にまかせて,過労をかさねたのではないかと思い,ガンだと,どうして早期発見できなかったのかと気にかかる.
○病名が心筋硬そくだと,元気にまかせて過労をかさねたのではないかと思い,ガンだと,どうして早期発見できなかったのかと気にかかる.
語順が逆順の場合にテンをうつ
○私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCにAが紹介した.
○Aが,私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した.
→「Aが」を強調したいとき
上記以外のテンは,思想の最小単位を示すもの.重要でないテンはうつべきではない.
- 父は死んだ.:ひとつの思想表現
- 父は,死んだ.:ふたつの思想
漢字とカナ
視覚としての言葉の「まとまり」がわかりやすくなるように.
×その結果今腸内発酵が盛んになった.
○その結果いま腸内発酵が盛んになった.
助詞
係助詞「ハ」:格助詞ガノニヲを兼務して,文の題目を示す
- (「ヘンリはどうした?」)「ヘンリは到着しました.」(顕題)
- (「だれが到着した?」)「ヘンリが到着したんです.」(陰題)(「到着したのはヘンリです.」とすると顕題)
- (「何かニュースはないか?」)「ヘンリが到着しました.」(無題) ※英語では全て Henry has arrived. となる.
対照(限定)の係助詞「ハ」
×彼は飯をいつも速くは食べない.
→「ふつうは速いが,常に速いわけではない」とも「常に普通か遅い」とも解釈可
ハと否定の動詞との必須のセット
×メコン=デルタでは,日本のようにガラスの破片がころがっていることはない.
○メコン=デルタでは,日本のようにはガラスの破片がころがっていることはない.
ひとつの文の中では3つ以上のハをなるべく使わない.
×私は週末には本は読みません.
→何が対照かわかりにくい
マデとマデニ
- 来週までに掃除せよ.:一度で良い.
- 来週まで掃除せよ.:掃除し続ける.
接続助詞のガ
二つの句の関係が「プラス」でも「マイナス」でも「ゼロ」でも使える.
「彼は大いに勉強したが,落第した.」
「彼は大いに勉強したが,合格した.」
→「のに」や「ので」を用いればはっきりする.
並列の助詞
「出席したのは山田と中村・鈴木・高橋の四人だった.」:最初だけ使う.
○犬と猫と猿とがけんかした.:3者入り乱れて
○猿と,犬と猫ととがけんかした.:犬と猫の同盟軍
×犬と猫と猿がけんかした
段落
- 段落はまとまった思想表現.「なんとくなく」は×.
- 改行の場所がわからない→論理的な文章を書いていない
無神経な文章
紋切型
皆が使っている便利な言葉→マンネリ,自分の実感によらない言葉.
雪景色といえば「銀世界」,悔しいときは「唇を噛む」など.
繰り返し
「・・・です.・・・です.・・・」
自分が笑ってはいけない
→落語のように
体現止め
→多用しない
ルポルタージュの過去形
→現在進行中のものまで過去にしない.現在形の方が臨場感がある.
サボり敬語
用言のあとの「ダ」「デス」は禁止
×「うれしいです」「あぶないです」
○「うれしうございます」「危険です」
他
文章のリズム
→朗読してみる
書き出し
序論は短く
- 「いきなり現場型」
- 「よそごと型」
- 「一般論だが刺戟的な話からはじめる」
具体的に
- 具体的事実を書くということは,大げさな修飾語をやめるということ
- 説得力に欠けるときは,具体的材料が足りていない.観念や理論や説教がナマのかたちで出てきやすく,ウサン臭いものに.
- 作者: 本多勝一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2015/12/07
- メディア: 文庫
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